***If it were not for You...2***







エドワードとアルフォンスは東方司令部の前に立っていた。
昨日の夜いきなり尋ねてきて、いきなり帰った理由の分からぬ大佐に、生体練成の情報を聞き出すために・・・。

エドワードの機嫌はすごぶる悪かった。
まるで餌を目の前に鎖でつながれて動けない状態の犬のように。

昨日の夜大佐が出ていった後すぐに寝れなくて、うだうだ考えていたせいだ。
なんで?なんで?頭の中はその言葉の嵐で歌も作れそうなほどだった。
教えてくれたって全然よかったのに・・・!
寝ろだなんて子供扱いしてんじゃねーよ!
エドワードは寝不足のせいもあってイライラしていた。
結局昨日寝たのは、ロイが訪れてから3時間後のことだった。(結局いつもと同じ時間ぐらい)
アルフォンスがどうにかなだめて寝かしつけたのだ。
ベットの中に入っても、唸っている兄に優しい弟が一喝をしたらピタっと黙ってコロッと眠りについた。

司令室に向かうためにアルフォンスを連れてドカドカ地響きを立てて歩き出した。
あきらかに、私は今不機嫌です風オーラをかもし出しながら目的地に突っ込んでいく。

近くを歩いている軍人達は、小さな錬金術師が怒っているので驚き慌てて道を譲っている。
怒っているエドワードにぶつかるなんてことをしてしまったら、命が危ない・・・。
ここにくると、怒って帰ったり、今日のように怒ってやって来たりすることは毎度のことだ。
その原因はここの最高責任者のロイ・マスタングだってことも分かっている。
怪我人が続失するが、さわらぬ神にたたりなし、だ・・・。

今回はアルフォンスも連れて行く。
いつもならアルフォンスが遠慮するのだが、生体練成についての情報なので連れて来ることにした。
だが、実際には軍部内にアルフォンスは入れないのだ。

軍属でもないのに、軍の施設に一般市民が入り込むのは許されないこと。
一般人が自由に出入りできる軍施設もどうかと思うし、重要機密が漏れてしまうかもしれないから、用事があるとき以外・事前に受付で予約を入れないと絶対に入れない。
たとえ兄が国家錬金術師であろうとも、例外はないのだ。

でも、それを打ち負かせたのが大佐だ。
東方司令部にいるときだけは、自由に出入りできるようにしてくれた。
兄がいなくても自分に用事があるときは遠慮なく尋ねてこい、と笑顔を見せながら大佐は言った。
おかげで、兄と離れずにずっと一緒に居られるわけだ。
大佐もその辺が分かってくれていたみたいで、許しを許可してくれたのだろう・・・。
ホントにお世話になりっぱなしだな・・そう思うアルフォンスだった。

執務室前までくると、すぅ〜とエドワードは大きく息を吸いこみ、螺子が飛んじゃうんじゃないかという思う勢いで扉を開けた。
扉を開けたというより、扉に蹴りかかったという表現の方が適切なのかもしれない・・・。
ともかく、乱暴な開け方で執務室にノックもなしに入り込んだ。

「おら!!大佐!!来てやったぜ!!」

隣のアルフォンスは鎧の耳の部分を両手で塞いでいた。
実際には魂に直接響き渡るのでたいした意味はないのだが、気分的にやってみたらしい。

そんな大声で入り込んでも、部屋の主のロイは驚きもしなかった。
書類から顔を上げ、不愉快そうに顔をしかめていた。
だが、瞳は楽しそうな光が奥の方で輝いている。
まるでエドワード達が今から入ってくるのが分かっていたみたいだ。
たぶん、激しい足音でその正体が分かったのだろう。

「君は、もっと大人しく入って来れないのかい?これでは扉が壊れてしまうよ・・・」

手に持っていた書類を机の上に放り投げ、椅子を立ってエドワード達に近づいてきた。
そんな瞳を見て、カチンと頭にきたエドワードは、

「うるさい!それより、生体練成の情報を教えろよ!!」

こっちに向かってくるロイに、ツカツカとエドワードからも近づいていった。
ちょうど真ん中ぐらいにくると鉢合わせになり、二人して止まった。
ロイは微笑を浮かべながらエドワードをかなり上から見下ろし、エドワードは人を睨み殺せそうな瞳でかなり上の方にあるロイの顔を見上げていた。

「上官に対してそんな口の聞き方はないだろうに・・・」

ふぅ〜と朝から大きな溜め息だ。
ポケットに手を突っ込んでいて大変行儀が悪いやつと思ったエドワードだが、(エドワードに言われたらおしましだろう・・・ロイが聞いたらかなりショックを受けること間違いなしだ)

「昨日尋ねてきた時に教えてくれればよかったのに!」

「まだ昨日のことを根に持っているのかね?・・・心が狭いね。鋼の」

ポンっと頭に手をおき、ちょっと同情した風にいうロイにむかつき、エドワードは顔を引きつらせた。
思わず頭の上の手をどけるのも忘れてしまったぐらいに、頭に来ていたらしい。

「あんたわざわざ宿に来たってのに、どういうことだ!!」

その顔を面白そうに眺めるロイだったが、時計を見て、

「む!いかん。朝の会議が始まってしまう」

そういうと、今しがたエドワード達が入ってきた扉に向けて足早に歩いていった。

「お、おい!どこに行くんだよ!?」

エドワードの脇を通りすぎながら、

「朝の会議だ。これには絶対に出なくてはならないからな」

早口にそうゆうと、扉から出ていってしまった。
ぼーぜんとしていたが、扉が閉まる音に目がさめ慌てて大佐の後を追いかけた。




走りながら追いかけたが、コンパスの違いか、ロイは早歩きなのに結構先を歩いていた。

「おい!大佐!」

顔に怒りマークをたくさん浮かべながら、必死にロイを追いかけ話し掛けるエドワード。
ちなにみ、アルフォンスはお留守番をしている。
二人で行っても意味がないな〜と考え自主的に残ったのだった。

エドワードの声を背中で聞きながら、

「なんだ」

顔を少し後ろを向けて、大股でやってくる小さい子供を見やった。
歩みを少し緩めてやるとすぐに追いつき、少しだけ切れた息を整えてながら、

「情報は!?」

イライラした表情で尋ねるエドワード。
それを呆れながら見て、言葉を紡ぐ。

「だから、今から会議だといっているだろう。もう少しぐらい待っていなさい」

ねっ?と、我侭をいう小さな子供に言い聞かせるようにロイは優しく言った。

「はぁ!?昨日から待ってんのに、なんでもっと待たなくちゃいけないんだよ!!」

そうとう昨日のことが頭にきているようだ。

ロイは息をはきながらいったん止まり、エドワードと向かい合った。

「昨日のことは悪かったと反省している。それに、今日君がこんなに早くやってくるとは思っていなかったから、用意をしていなかったんだよ」


しれっと言い放つロイ。


実際は用意してあるが、ちょっと問題ありなのでエドワード一人に見せられないのだ。


こんなに我侭をいっているのに、ロイが思ったよりも下手に出ているので、ちょっと拍子抜けをしたが、

「俺が朝早くから来るなんてことは分かりきってたことだろ!?」

なおも食って掛かるエドワード。
ロイは苦笑いをしながらエドワードの頭にまた手を置き、

「鋼の。甘えてくれるのは嬉しいが、お願いだからもう少し待ってくれ」

その言葉を聞き絶句するエドワード。
エドワードが固まっている間にくしゃっと髪を撫でながら、会議に出かけていった。




そう、エドワードは甘えたい時に自然に我侭になってしまうのだ。
それは心が許された相手にしか現れないものだった。
自分では気付いていなかったみたいだが、ロイはこの頃随分我侭を言うようになったなと思っていたので、こうゆう結論に辿りついたのだった。
甘えてくれるということは、随分信頼されたようで嬉しく思っている。

随分時間がかかったな・・・、初めて会ってもう3年だ。

それまで信頼されていなかったと考えると少し悲しくなってくる。
だが、これからよりいっそうあの子供が甘えてくれるのを待っている。
あの子の目的のために力をもっと貸していってやりたい・・そんな保護よくが掻き立てられる・・・。
何故こう思うのか、いまいちよくわからないが心からそう思わせるなにかかエドワードにはあった。
そんなことを考えていると、会議室につき思考をストップさせた。





エドワードはまだ固まっていた。
ロイからでた言葉が信じられなかったからだ。
自分が甘えているって!?ただの我侭をいっているだけなのに!?

・・・・・・。

そんなはずはない、自分は誰にも甘えてなんかいない。
甘えてはいけないのだ。

・・・・・・。

考えていても分からないものは分からないので、とりあえず大佐の会議が終わるまでアルフォンスの待っている執務室で待たせてもらうことにした。




執務室に重い足取りで戻ってみると、そこにいるはずのアルフォンスがいなかった。

「?」

室内に踏み込みながら、トイレにでもいったのかな?と、考えられない疑問をふと思い浮かべるも、鎧だけの身体なのに何故トイレに行くのだ!!と自分に言い聞かせ、アルフォンスを探した。
そんなことを考えるくらいに混乱しているらしい・・・。
なんだか今回は混乱しっぱなしだな・・・、と自然と溜息を吐くエドワード。

隣の司令室に行ってみた。
扉を開けると、まだ朝なのであんまり人はいなかった。
居たのは、いつも朝一に来るホークアイ中尉、真面目なフュリ―曹長だけだった。
そう考えると、大佐は結構朝早くにやって来るんだな・・・、とちょっぴり感心したのだった。
だが、アルフォンスの姿はどこにも見えなかった。


執務室の続き扉から出てきたエドワードに驚かないで、

「おはよう。エドワード君」

「あ、おはようございます。エドワード君。今日も元気ですね」

二人がにっこり微笑みながら挨拶をしてきた。
どうやら、さっきのやり取りが聞こえていたらしい。
まぁ、あれだけ騒がしくしていれば隣の部屋に聞こえるのも無理はないだろうが。
ちょっと恥ずかしくも思いながら、机についている二人に近づき、

「アルフォンス見なかった?」

さっきまでの怒りはどこへやら、あどけない子供の姿になって尋ねた。
怒っている矛先は大佐限定らしい。
さっきまでの怒り声が聞いていた二人は苦笑いをしながら、この変わりようが子供らしいと、心の中で思いながら、

「アルフォンス君?見ていないわ。どうしたの?」

さっきまでの、経緯(経緯というほどのものはないが)を話した。
アルフォンスは部屋に残って自分の帰りを待っていた、と説明をした。

「変ねぇ・・?隣の部屋からこっちには来なかったし、物音も聞こえなかったと思うわ?ねぇ、フュリ―曹長」

ホークアイ中尉は小首をかしげ腕を組みながら、フュリ―曹長にも確認を取った。

「そうですね・・・、ちょっと分かりません・・・。お役に立てずすいません」

本当にすまなさそうにあやまる曹長に、エドワードは手をぶんぶん振りながらお礼の言葉を言った。




どこに行ったのだろう?
アルは俺に内緒でどこにも行かないはずなのに・・・。
しかもここは軍部の施設内だ。
なおさら一人で出歩くはずはないと思うのだが・・・?

まさか・・・。
アルフォンスが誰かに攫われてしまったのかもしれない。
そんな考えを思いついてしまった。
そんなはずは無いと思うのだが、ここは軍部だ。
どこからか人体練成をした事がばれ、実験台にしようと思ったのかも知れない。
そんなやつが軍部内に進入して、俺がいないすきにアルを連れ去ったのかもしれない・・・。
そんなどうしようもない不安が胸の内を駆け抜けた。


指令室から廊下に出て、アルフォンスを探す。
中尉に大佐の会議の終わるだいたいの時刻を教えてもらったから、その間に見つけ出そうと思っていた。
たとえその間に見つからなくても、ただ一人の弟だ。
見つけるまで大佐の執務室には戻らないつもりだ。
弟がいないのに生態練成の情報を聞くことは決してできない。
二人で聞かなくては意味がないのだ。

「おっかしいな〜?アルのやつどこに行ったんだろう??」

廊下を歩きながらキョロキョロせわしなく首を動かすエドワード。
自分になにも告げずにどこかへ行ってしまったことに心を少し痛めつつも、必死に探す。

ちょうど中庭の渡り廊下にさしかかった時、猫の泣き声が聞こえてきた。
何で軍部内に猫が入り込んでいるんだ・・?とおかしく思いながら、声の方へ視線を何気なく向けた。
猫をたった一匹でも入り込ませてしまう軍部の警備に少し怒りを覚えた。

警備が甘すぎる。

もう少し厳重にした方がいいと思った。
この世には練成術がある。
大抵のことは練成術でできてしまうから、もう少し危機感を持ってもらいたい。

仮にも国民を守る軍人が、こんなのではたしていいのか??



視線を向けた先には想像道理の猫がいて、さらに思いがけない人物も発見した。


「ぅおーい!!アルフォンス!!」


なにやってんだよ!!思わず手と声で突っ込みをしてしまったエドワード。
そう、そこにいたのは探していたアルフォンスだった。
怒りながら猫と戯れているアルフォンスに向かって走り出した。

「に、兄さ〜ん・・」

あはは・・、と猛烈な勢いで突っ込んで来る兄に向かい苦笑いを浮かべるアルフォンス。

「こんなとこでなにやってんだよ!!」

息を切らせながら怒鳴るエドワード。
アルフォンスは猫を掲げながら、

「えっと、大佐の執務室から中庭にいるこの猫が見えたんだよ・・・。それで、この子が僕に遊んでって瞳で訴えてきたんだよ!だから・・」

「だ〜か〜ら〜?」

えっと、その、しどろもどろになりながら必死に弁解をしようとするアルフォンス。
そんなアルフォンスを見ながら、昨日から何度目かわからないため息をはきながら、

「まったく・・・。探したんだぞ!?戻ってきたらお前がいなくてさ・・・」

どっかりとアルフォンスの隣に腰を落とすエドワード。
猫をアルフォンスから奪い取り猫の頭を撫でてやる。
その顔には安堵の表情が見て取れる。
兄が自分のことを心配してくれたことに気付いたアルフォンスは、

「ごめんね・・・。兄さん・・・」

しょんぼり謝るアルフォンスを見ながら、エドワードは、

「もういいよ。アルが無事なの分かったしさ」

笑いながらアルフォンスの背中をバンバン叩くエドワード。


「でも・・・、どうしてもこの子を僕のコレクションの中に入れたかったから!!」


その場に突っ伏すエドワードだった。
この弟はなにも自分の心配事が分かっていない・・・。

だが、無事に見つかってよかったと子猫と戯れるアルフォンスを見て安堵の溜息を付いたのだった。



***TO,BE・・・***





第二章目。
これもあんまり本編とは関係ない・・・;;自分でも何故こんなだらだら本編に繋がらない話しを書いているのか不明・・・;;
なぜロイさんはエドに情報を与えると言って与えていないかというと、「この情報は本当にこいつに渡していいものか・・・」と考えているからじゃないかな?
ってこんな重大なことをこんなところでバラしてもいいものやら・・・(書かなかったらそのまま忘れ去られそうだから;;)

*2005.9.5